(KS)ハルカナセカイ


 そそくさと礼を言い、風間と羽田はゆうこ先生のアパートから出て急いで車へと乗り込んだ。


「風間さん。
いったい金田八重子は何で亭主の浮気相手の子どもなんて連れ去ったんでしょうね?
しかも陽矢くんは八重子になついてたんでしょうか?」 


「さあな。
しかし花見やなんやで触れ合う機会は山程あったようだし、多少人見知りしてもなかなか会う機会がない親戚だと言われたらそれまでだろうしな」


「八重子が犯人なんでしょうか?」


 羽田のその問いには風間は答えず、ふっつりと喋るのをやめ、車が流れるのを見ていた。


 しばらくして信号待ちをしているとき、何か突然思い出したらしく、風間は羽田に話し掛けた。


「そういえば佐藤の子ども、花菜ちゃんとかいう子はどうしたんだろうな?
どちらかの実家に行ったんだろうか」


「そう……いえばそうですね。
花菜ちゃん、か……陽矢くんと同じでまだ三歳なんですよね。
なんだか切ないですね」


 羽田の言葉で終息したかに見えた話の途切れた車内は、静かに街を走り抜けた。


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