(KS)ハルカナセカイ


 風間の中にひとつの仮説が思い浮かぶ。


 金田は銀行の金を横領をしていた。
そして佐藤はそれを知り、脅迫するか自首を勧めるかした。


 その時八重子が陽矢を連れて来た。
佐藤も陽矢に面識はあった筈だから、何故八重子が? と不審に思った筈だ。


 そこで金田と八重子に問い詰める。
二人はシラを切るか開き直るか。


 佐藤にすれば脅迫をしていたなら格好のネタが飛び込んできたわけだし、自首を勧めていたなら更に強く言ったのだろう。


 無理に連れて行こうとし、抵抗されて勢い余って、というところだろうか……


 捜査に先入観は持ち込んではならないが、思考を巡らせていると、課長に捜査員が書類を渡した。

「検死の結果、榛瀬陽矢の爪から抵抗したときについたと思われる佐藤勝の皮膚が検出されました」


 その報告を受けて次々と指示を出す課長をぼんやりと見つめながら、風間は考え込んでいた。


──佐藤が陽矢を殺した……

 自分の子どもと同い年くらいの子どもを?


 疑問は残るが気を取り直し、風間は再び受話器を持ち直した。


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