(KS)ハルカナセカイ
刑事の話で和枝が浮気をしていたことは確定となってから、すぐに花菜を家へと連れて来た。
漠然とした不安を抱えながらも、よく顔を合わせていた陽平を警戒することなくついてきた花菜。
陽平には妻の浮気相手がいまだに金田か佐藤かわかりかねていた。
渦巻くどす黒い感情を抑えきれず、嫉妬と復讐のために花菜を引き取ることを勝手に決めた。
花菜がいる限り、同い年の陽矢を思い出すだろう。
そして己の犯した罪を思い出すがいい。
花菜を見ながら険しい表情になっていく自分を止められなかった。
しかし男と女ではこんなにも違うのかというほど、花菜はおとなしい。
和葉のときには仕事で無我夢中の時期だったから、こうやって余裕を持って幼い子どもを見るのは初めてかもしれない。
そう感じると少しずつ表情が和らいでいくのが自分でもわかる。
ここ数日で荒んでいた気持ちが、ほんの少しだけ安らぐ気がした。