あなたへ。
二人でそれぞれメニューに目を通しながら、千晶が一人言の様に言った。
「あ〜あ。夏休みも終わっちゃうなぁ。学校めんどくさいなぁ」
ここ3週間ぐらい、千晶の通う専門学校は夏休み期間に入っていた。来週の月曜日から新学期が始まるらしい。
学生と言う身分から離れたあたしにとっては、休みがあると言うだけで羨ましい話だった。
だが、今までの千晶の話を統合すると、美容専門学校はその華やかなイメージとは異なり意外に学校生活が大変なようだ。
授業は月曜日から金曜日までの平日は常に8時45分から16時20分までビッシリあり、高校の時と同様掃除当番まであるらしい。
おまけにこれからカットやワインディングといった実技に慣れてきたら、学校主催のコンテストなんかも企画されていて、土日も平気で潰れてしまうかも、と千晶は軽く溜め息を吐いていた事もあった。
「なんか都合の良いバイト、ないかなぁ」
千晶は夏休み中、毎年夏に大通公園で開催されるビアガーデンの短期アルバイトをしていた。皆で海に行った日はたまたまシフトが休みだったが、ほぼ毎日朝から晩まで働きづめで、なんだかバスケで鍛えたその身体が更に引き締まった様に見えた。
「…もしかしたら、うちの店の夕方のシフト、募集するかも」
「杏子のコンビニかぁ。学校からは近いけど家から遠いんだよね」
「また学校始まったら、忙しくなるんだから無理しない方がいいんじゃない?」
「そうはいかないよ。親に車の免許のお金、卒業までには返しておきたいしさ。
それに、稼げる学生のうちに少しでもお金を貯めたいんだ」
「千晶は親からもお小遣いもらってるじゃん?そんなにお金が必要なの?」
千晶のお父さんは所謂ゼネコンと呼ばれる中堅建設会社で現場監督をしているサラリーマンだ。
お母さんは近所の皮膚科で医療事務のパートをしている。
2つ年上のお兄さんは現在市内の私立大学に通っていて、どうやら就職は地元を出て東京方面に決まりそうだ、と言っていた。
「それはそうだけど、今はそんなに貰ってないし。兄貴にもあたしにも学費かかってるしさ、これ以上親に迷惑かけられないよ」
「何か、欲しいものでもあるの?」
「うーん。まぁ、そんなところかな」
何を?と聞きたかったが、ちょうどそのタイミングでウェイトレスが二人分のパスタを運びにやってきた。
千晶は「あ、やっと来た。食べよ食べよ。あたしお腹空いちゃったよ」と言ってはトマトソーススパゲティを平らげるのに夢中になり聞きそびれてしまった。
それに、昔から意思が強い千晶だけあって、その決意めいた言葉に、何か途方もなく壮大な目的が隠されているような気がして、あたしは聞くの躊躇ったと言うのもある。
それからはあたしと千晶は、いつもの様に他愛のない話をした。
千晶の学校生活のこと。
はっきり言って授業についていくのが大変で、それこそ実技は最初はなかなか上手に出来なくて戸惑う事の方が多かった。器用にこなすクラスメイトを見て、自分が一歩も二歩も遅れているように感じて、悔しい思いをしたと意外な心境を話してくれた。
だがそれも少しずつ出来てくると嬉しいし、やはりなんだかんだ言っても学校は楽しい、ただ座学の授業は眠くて仕方がないとオチを付けて笑った。
あたしのアルバイト先であった出来事、冬になって雪が降る前に、千晶は親かお兄さんの車を借りるから、あたしとまどかの三人でドライブに行こう、と誘ってくれた。まどかも免許を持っているから、お互い疲れたら交代で運転すればいいから、と。
そう言えばまどかは、確か大学の推薦入学が決まった途端に、「思ったより大学早く決まっちゃったし、ヒマだから」と教習所に入校したのだった。
それからはほぼ毎日通って持ち前の飲み込みの良さで僅か1ヶ月半で免許を取得した。
なのでこの三人の中で、免許を持っていないのはあたしだけと言う事になる。
二人だけに運転を任せるのは申し訳ないし、あたしも免許を取った方がいいな、と思った。
しかし、運動神経や反射神経、と言った類いの物をこの世に生み落とされる際に、ママのお腹の中に忘れてきた様なあたしに果たして運転免許が取れるのだろうか。
それに、せっかく免許を取ったとしても、車を買って運転をしなければペーパードライバーとなり宝の持ち腐れになってしまう。
免許を取る資金を貯めるのも大変なのに、車を買うなんて夢のまた夢だ。
自宅から最寄りのバス停まで徒歩5分ぐらいの距離だし、正直今のあたしにとって免許の必要性をあまり感じてはいなかった。
まぁ今は学生ではないので、レンタルビデオ屋などで会員カードを作る際に、身分証の提示を求められた時に若干困ると言った弊害があるくらいだ。
あたしが免許持ってなくても、明は運転出来るし…。
「あ〜あ。夏休みも終わっちゃうなぁ。学校めんどくさいなぁ」
ここ3週間ぐらい、千晶の通う専門学校は夏休み期間に入っていた。来週の月曜日から新学期が始まるらしい。
学生と言う身分から離れたあたしにとっては、休みがあると言うだけで羨ましい話だった。
だが、今までの千晶の話を統合すると、美容専門学校はその華やかなイメージとは異なり意外に学校生活が大変なようだ。
授業は月曜日から金曜日までの平日は常に8時45分から16時20分までビッシリあり、高校の時と同様掃除当番まであるらしい。
おまけにこれからカットやワインディングといった実技に慣れてきたら、学校主催のコンテストなんかも企画されていて、土日も平気で潰れてしまうかも、と千晶は軽く溜め息を吐いていた事もあった。
「なんか都合の良いバイト、ないかなぁ」
千晶は夏休み中、毎年夏に大通公園で開催されるビアガーデンの短期アルバイトをしていた。皆で海に行った日はたまたまシフトが休みだったが、ほぼ毎日朝から晩まで働きづめで、なんだかバスケで鍛えたその身体が更に引き締まった様に見えた。
「…もしかしたら、うちの店の夕方のシフト、募集するかも」
「杏子のコンビニかぁ。学校からは近いけど家から遠いんだよね」
「また学校始まったら、忙しくなるんだから無理しない方がいいんじゃない?」
「そうはいかないよ。親に車の免許のお金、卒業までには返しておきたいしさ。
それに、稼げる学生のうちに少しでもお金を貯めたいんだ」
「千晶は親からもお小遣いもらってるじゃん?そんなにお金が必要なの?」
千晶のお父さんは所謂ゼネコンと呼ばれる中堅建設会社で現場監督をしているサラリーマンだ。
お母さんは近所の皮膚科で医療事務のパートをしている。
2つ年上のお兄さんは現在市内の私立大学に通っていて、どうやら就職は地元を出て東京方面に決まりそうだ、と言っていた。
「それはそうだけど、今はそんなに貰ってないし。兄貴にもあたしにも学費かかってるしさ、これ以上親に迷惑かけられないよ」
「何か、欲しいものでもあるの?」
「うーん。まぁ、そんなところかな」
何を?と聞きたかったが、ちょうどそのタイミングでウェイトレスが二人分のパスタを運びにやってきた。
千晶は「あ、やっと来た。食べよ食べよ。あたしお腹空いちゃったよ」と言ってはトマトソーススパゲティを平らげるのに夢中になり聞きそびれてしまった。
それに、昔から意思が強い千晶だけあって、その決意めいた言葉に、何か途方もなく壮大な目的が隠されているような気がして、あたしは聞くの躊躇ったと言うのもある。
それからはあたしと千晶は、いつもの様に他愛のない話をした。
千晶の学校生活のこと。
はっきり言って授業についていくのが大変で、それこそ実技は最初はなかなか上手に出来なくて戸惑う事の方が多かった。器用にこなすクラスメイトを見て、自分が一歩も二歩も遅れているように感じて、悔しい思いをしたと意外な心境を話してくれた。
だがそれも少しずつ出来てくると嬉しいし、やはりなんだかんだ言っても学校は楽しい、ただ座学の授業は眠くて仕方がないとオチを付けて笑った。
あたしのアルバイト先であった出来事、冬になって雪が降る前に、千晶は親かお兄さんの車を借りるから、あたしとまどかの三人でドライブに行こう、と誘ってくれた。まどかも免許を持っているから、お互い疲れたら交代で運転すればいいから、と。
そう言えばまどかは、確か大学の推薦入学が決まった途端に、「思ったより大学早く決まっちゃったし、ヒマだから」と教習所に入校したのだった。
それからはほぼ毎日通って持ち前の飲み込みの良さで僅か1ヶ月半で免許を取得した。
なのでこの三人の中で、免許を持っていないのはあたしだけと言う事になる。
二人だけに運転を任せるのは申し訳ないし、あたしも免許を取った方がいいな、と思った。
しかし、運動神経や反射神経、と言った類いの物をこの世に生み落とされる際に、ママのお腹の中に忘れてきた様なあたしに果たして運転免許が取れるのだろうか。
それに、せっかく免許を取ったとしても、車を買って運転をしなければペーパードライバーとなり宝の持ち腐れになってしまう。
免許を取る資金を貯めるのも大変なのに、車を買うなんて夢のまた夢だ。
自宅から最寄りのバス停まで徒歩5分ぐらいの距離だし、正直今のあたしにとって免許の必要性をあまり感じてはいなかった。
まぁ今は学生ではないので、レンタルビデオ屋などで会員カードを作る際に、身分証の提示を求められた時に若干困ると言った弊害があるくらいだ。
あたしが免許持ってなくても、明は運転出来るし…。