3を3回、2を2回



それから桑田というその女の子とニコは連れたってコンビニへ向かった。

一人ではない、
というその小さな事実だけで今日はいつもと違う近くのコンビニに入ることだってできた。



「私、奈津美って言うの。」
「じゃぁなっちゃんだね。なっちゃんて呼んでいい?」
「全然いいよ。小谷さんは?」
「私、ニコ。」
「じゃぁニコちゃんて呼ぶね」

ニコと奈津美はコンビニまでの短い時間でたくさんのことを話した。


奈津美もニコと同様に女子校だったこと。
友達をつくるのが苦手で昼休みはいつも本を読んで過ごしていたこと。
ニコは一人なのに昼休みになると何処かへ言ってしまうので話しかけたくても今までタイミングがつかめなかったこと。
志望校のこと。
選択科目のこと。
数学の公式のこと。
好きな食べ物のこと。
昨日見たドラマのこと。




ニコは始めてコンビニのおにぎりが美味しいと感じた。
それぐらいに充実感を覚えていたのだ。

予備校にいる間は上がることがないと思っていた口角が自然と綻ぶ。



「そうだ!ニコちゃんの携帯、教えてくれない?」
「うん、いいよいいよ。交換しよ!」





ニコがカバンの中から携帯を取り出そうとした瞬間、


「あっ…」

一瞬、
ボックスの存在が頭にぼやっと浮かんだ。



「どうかした?充電ないとか?」


「ううん!大丈夫」



家に帰ってから見ればいいか、
そう思い、ニコは頭からパスワード;nicoを無理矢理に追い出した。



こうして、ニコのアドレス帳には、
絶対に出来るはずがないと思っていた『予備校』というグループが出来たのだった。


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