海宝堂2〜魔女の館〜
今はまだその時ではない。
怒りに任せて力を振るい、全てを大無しにしてしまうほど馬鹿なことはないと<彼女>は知っていたからだ。

密かに策略を張り巡らせ、完璧に作り上げた罠に誘いこみ、裏切りと疑念の刃を喉元にあて、絶望の谷に突き落としてやる。

その瞬間の事を考えるだけで、悦びに身が振るえそうになる。

そして、<彼女>は冷静に結界を立て直した。

結界の消えたその場所は静かだった。
しかし、その静寂は長くは続くことはなく、細く高い音が響き渡ったかと思うと、水は細かい振動を始め、それが重なり、集まって、大きなうねりへと変化した。

うねりはまた他のうねりと合わさり、誰も寄せ付けぬ激流の壁となった。

結界を張り終えると<彼女>は再び目を閉じた。
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