嘘つき⑤【-sign-】
「やあ、色男。元気だったか?」


恭平さんが砕けた口調で愁哉さんに笑いかける。年が近い二人は付き合いも長くて、私が愁哉さんと知り合う前から懇意にしているらしい。



「相変わらずだな」


と愁哉さんは短い微笑に低い声を乗せた。


流石に、長身で秀麗な二人が並ぶと妙な威圧感と見入ってしまう雰囲気が流れて、見慣れた筈の光景でもつい口を噤んでしまう。二、三の会話をした後、愁哉さんの視線が私に気付く。


この場には――



冴木さんに、天童さんに、美弥子さんに、私。奇妙な組み合わせに少しだけ体に緊張が走った。
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