嘘つき⑤【-sign-】
愁哉さんは、ハッとした様に息を呑んだ。
その顔が、ひどく傷ついていて、それなのに穏やかで、私は気の高ぶりなど一瞬にして消え失せる。
「…あなたの、言う通りだ。」
私に発せられた言葉、その筈なのに、まるで自嘲したように落ちる。
「逃げ出す事を拒む必要はない」
愁哉さんは微笑む。綺麗な微笑。なのに、泣き出しそうな、
あたしは、
「愁…哉、さん?」
抱き締めたくて、触れたくて仕方なくなる。
まるで、
瑠香さんがいなくなったあの日の様で、
「臆病だな、俺は」
愁哉さんは、優しく声を落とした。