嘘つき⑤【-sign-】

青々と澄み渡る空を見上げながら、そっと手を伸ばす。小さい頃、手を伸ばしても雲が掴めないのは何故かしら、と思っていた自分がおかしい。


視覚には近くても、あんなに遠いのに。当たり前の事を素直に当たり前だと思わない感性はいつどこに置いてきてしまったのかしら。



「琴音ちゃん、そーやってると消えそう」



不意に聞こえたのは少し不安気にだけど相変わらず柔らかく笑う恭平さん。


「まあ、逃がさないけど」



だけど、柔らかい瞳は一瞬で、獰猛な獣みたいに瞳を光らす力強い色は隠せない。



「今度パーティがあるんだけど、一緒に行かない?」


恭平さんはまた目を細めて、あたしの手を掴んだ。


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