恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
勝手に話を進める祐ちゃんにそう言い返そうとした時。
視線の先に知っている人の姿を見つけた。
金色の長髪に高い身長。
胸元の大きく開いた白いタンクトップに、シャツを羽織ったラフな格好。
下には、色のあせたジーンズをはいていた。
―――灰斗さんだ。
大通りから見える細い路地。
そこにいるのは間違いなく灰斗さんで、一緒にいるのは20歳前後の女の人だけど……。
止まったあたしを不思議に思った祐ちゃんが、あたしの視線の先を追う。
『なにー? ……あ、いちゃついてるカップル?』
祐ちゃんはそう言ったけど……、でも、違う。
灰斗さんの口許が、女の人の首筋にあたってる。
それは、ただのカップルがいちゃついているようにも見えなくはないけど……。