恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
だけど、違う。
女の人のウツロな瞳が教えてる。
あれは、……―――吸血行為だ。
見ている先で、女の人がふっと気を失う。
それを灰斗さんが抱きとめて……、そこでハっとして祐ちゃんに向き直った。
『祐ちゃんっ、あたし、あそこのアイス食べたい!』
祐ちゃんは、ぼんやりしながら灰斗さんと女の人を見ていたけど、あたしの言葉に視線をアイスクリーム屋さんに移す。
『えー、結構並んでんじゃん』
『あたし、昨日お小遣いもらったし、おごるから買ってきてくれない? お願いっ!』
祐ちゃんは渋い顔をしたけど、おごりって事で納得したのか『何にするの?』なんて聞く。
『チョコチップが入ってるクリームのやつ』
あたしが差し出した500円を受け取った祐ちゃんが、6,7人くらい並んでいる列に並ぶ。
人気のあるアイスクリーム屋さんだし、これで少しは時間が稼げるハズ……。
祐ちゃんがこっちを見てないのを確認してから、そっと路地に入った。