恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
藍川の顔色を伺おうと顔を上げると、あたしを見つめる瞳に気付く。
切なそうに、とても切なそうに見つめる藍川に、気持ちが伝染したみたいだった。
感じた事のないほどの切なさが、静かにあたしを包む。
ざ、っと突然吹き付けた強い風が木を揺らす。
だけど、藍川もあたしもそれを気にするでもなく、見つめ合ったままだった。
あたしの髪と同じように、藍川の黒髪が揺れる。
風に落とされた葉っぱが、コンクリートの地面に触れてカサカサと音を立てた。
「行こう。おじさんが心配する」
つらそうに微笑んだ藍川。
あたしは何も言わずに頷いて、藍川の少し後ろを歩いた。
強く記憶された、藍川の切ない瞳。
それが、頭の奥をうずかせる。