恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「くるみちゃん、遅いから心配……」
玄関を開けたおじさんと、ちょうど鉢合わせになった。
藍川と一緒だった事に驚いたのか、おじさんは、あたし達2人を見て動きを停止させた。
「あ、たまたまそこで会って送ってもらったんだ。
同じクラスの藍川くん」
「……藍川です。初めまして」
藍川の挨拶に、おじさんはまた少し驚いた表情をしてから、慌てて口を開く。
「あ、ああ……初めまして。……藍川くん」
なんか普通に紹介しちゃったけど、まずかったかな。
だけど、やましい事でもないから隠す必要もないし……。
だからって、この歳で男の子と平気で紹介したりするのはまずかったかもしれない、なんて思っていると、藍川が言う。
「じゃあ、俺はこれで」
「あ、藍川くん」
すぐに背中を向けた藍川を、おじさんが呼び止める。
そして、藍川が振り返ると優しく微笑んだ。