風紀委員長ミーシャの事件簿
この場には私とラインハルトさんの二人がいる。

本来ならばどちらかが時間稼ぎ、どちらかが強力な魔法行使と役割分担して戦うべきなのだろう。

しかし、私は強力な攻撃魔法など何一つ知らないし、悪霊相手に時間稼ぎが出来るほどの体術や武器も持ち合わせていない。

できる事は先程のように治癒魔法で体力を回復させ、後はただただラインハルトさんの無事な勝利を祈る事だけ。

「……っっ」

悔しかった。

学園では泣く子も黙る風紀委員長などと呼ばれているのに、いざ本物の実戦の場に立てば手も足も出ない。

私はラインハルトさんの足手纏いにしかなっていないのではないか。

その事がただ悔しくて、情けなくて。

なら…祈る事しかできないのならば。

私は両手を合わせ、床に膝をつき、それこそ神にでも縋るように祈る。

どうかあの人に…ラインハルトさんに無事なまま勝利させて下さい…。

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