いつか来た道
いつか来た道
幼い頃に毎日通った駄菓子屋さん。


おばあさんが切り盛りする温かいぬくもりに包まれた


小さな小さな駄菓子屋さん


幼子の高らかな笑い声


当たった外れたはしゃぐ声


夏と言うにはまだ早過ぎる季節におばあさんは天国へ旅立った


冬の訪れと共に駄菓子屋さんも無くなった


毎日追いかけっこをした空き地は高層マンションに姿を変えた


果てしなく感じた長い長い道路は今では短く感じられる


毎日見上げた空は忙しさにかまけてあまり見上げなくなった


大人になるということはこうやって一つ、二つと何かを無くしていく事なのか


一体子供はいつから大人になる。
大人はいつから子供の頃の感情を忘れてしまうのか。


確かにあの日々は戻らない


もう子供じゃないんだからと大人たちは言う


大事に胸にしまった忘れたくない思い出たちはどこに置いてきたのか


一生忘れないと、確かにあの日誓ったはずなのに


気が付けばそれすらどこかに置き去りで私の心にはすき間ができている


大人はいつまで子供でいていいのか


子供のままではいけないのか


流されたとしても


押し潰されたとしても


汚されたとしても


私は私の心を忘れたくはない


毎日空を見上げてはその美しさに胸を打たれる私でいたい


悲しいときは泣き、楽しいときは笑い、苛立つときは怒り、嬉しいときは喜ぶ、そんな私でいたい


おばさんと言われる年齢になっても、おばあちゃんと言われる年齢になっても私はあの頃の私でいたい


だから大人たちよ


まだ子供のままでいさせて


まだ子供なんだからなんて言わないで


もう大人なんだからなんて聞きたくない


もう聞きたくないのよ


もう少しこのままでいさせて
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