新アニオタ王子
「なにコレ?」
「サプリだよ。そんなことも知らないの?」
「知ってるけど…」
「肌にも気を使わなきゃ…
せっかく痩せても肌の汚い男は圏外だよ?」
「そうなんだ…」
「ちゃんと飲みなよ」
「分かったよ。ありがとう」
そう言って満開の笑みを見せた。
いつもならその笑顔だって気持ち悪く見えるのに、今日のあたしにはなんだかその笑顔が嬉しく思えた。
見た目は気持ち悪いけど性格は素直でいい奴。
…岡本はそんな男だ。
何気なく雑談をしている中で
「痩せたらもちろん片思いの相手に告白するよね?」
突然聞いたあたしに、岡本は目を丸くさせる。
「えっ⁈」
「好きな人いるんでしょ?」
「マホリンの事じゃなくて?」
冗談なのか本気なのか…
「違うに決まってるでしょ。
あんただって努力すると決めたからにはそれなりの理由あるからでしょ?」
「う…うん。まぁ…それなりに」
もじもじと俯きながら答える岡本には苦笑いを返す。
ってか…好きな人に告ってくんなきゃ
あたしが今やってる事が全部無駄になっちゃうし…。
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「最近どうした?」
出勤したあたしに突然香月さんが微笑みながら聞く。
「どうした?って…何が?」
「最近、全然俺の事誘って来なくなったよな」
…
そういえば
あいつのコーチしてから
香月さんとプライベートで会うことがなくなってしまっていた。
でも、まさか香月さんの口からそんな言葉が出てくるなんて意外。
「彼氏でもできた?」
崩れない微笑みに、どんな理由が隠されているかも分からないけれど…
あたしは岡本の顔をを思い浮かべると
くすくす笑った。
「冗談でしょ?」
「彼氏をつくったらダメなわけじゃなぞ?」
「そんなんじゃなくて、本当にそんな男はいないんです」
「そうか…」
納得したように頷く香月さん。
香月さんでも、あたしに誘われないことの理由なんか考えたりするんだ?
可笑しい。
でも彼氏はいらないけれど岡本と出会ってからのあたしは少しだけ恋というものに興味が湧いてきた。
いつか
あたしでも、この胸をときめかせられるような相手を
見つけられる日がくるかしら?なんて最近、考えるようになってきてる。
だから、やっぱり
この仕事を通していろんな男を見るのは大切だ。
そして最近、気付いた事がある。
客がどれだけあたしにお金を使ってもあたしの気持ちを手に入れる事が出来ない様に…
あたしの欲しい恋もお金じゃ買えないって事。