携帯小説的恋
「これって、ある意味、チャンスじゃない?」

ひとしきり驚いた後、桃花ちゃんが真面目な顔してあたしに囁いた。

「え?」

「だって、こんな運命的な出会い、作品に取り込まない手はないよ」

落ち着き払って、真剣な瞳であたしを見つめる桃花ちゃんは、すっかり作家の顔で、有無を言わさぬ説得力がある。

で、あたしはと言うと、ただただ、この先の展開が怖くて仕方ない。

「できることなら代わってあげたいけど、これは順ちゃんの運命だからね。

あたしは楽しく傍観させて貰います」

ニッコリ笑ってそう言われて、

あたしはもう、きっと逃げることは許されないんだと、

……観念した。
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