【妖短】 カ ミ カ ク シ
【三人称】


ぼぅ・・・・・・
ゆらりゆらりと怪しく燃ゆる蝋の灯。

古びた境内の中。
祭壇には観音像では無く、蛇のそれが鎮座していた。

そしてそれに向かい一心にナニカを唱える男。
暗い中故かその容貌は一層、怪しさを増す。

ひょろりとした体つき。肉は無く骨を皮が包んでいる様だ。それ故にか、頬骨は浮き出、歯列が異様に目立ち更には眼が浮き出ている。ボサボサの長い髪はそれらの印象を更に怪しくしていた。

一見すれば妖怪にも見える。
それがこの男の端的に言った容貌だ。



ふいに唱え事をやめ、ふらふらとふらつきながら立ち上がる。
中から天高く昇った月を見上げ、口端を吊り上げた。

明日は新月。
昔から災いが起こりやすいと謂われる時。

「もうすぐ・・・・・・もうすぐだ・・・!明日で俺の願いが!」

男から歓喜の声が上がる。

だが、その時だった。
ばきぃ!!
と軋む音を上げ、月光が境内内へと入り込み

「てめぇか、犯人は」

低くどすの聞いた声が響いた。
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