【妖短】 カ ミ カ ク シ
【凛 視点】
※この章は環から凛視点に変わります。



「・・・・・・・・・・・・」

ここに着てからどれ位経ったのだろう。
別に不自由な生活は無く、逆に言えば贅沢の様な気もした。

食べていた食事を片付け、内接されたベッドの上にごろり、と寝転がる。

無意識の内に考えるのは彼・・・・・・環の事。


ずきんッ・・・・・・・・・・・・!


胸の奥が鈍く傷む。
枯らした筈の雫は瞳をうっすら潤す。

彼女が出来た。
その事実が、あたしを苦しめる。
いや、前々から存在は知っていた。
それが堪らなく、口惜しかった。

その座に居ることを許されなかったあたしと許された見知らぬ女。


環にとってその娘は、どれほど大切だったのだろう。


「ははっ・・・・・・虚しいな。そんなの考え無くても分かりきってるし」


自ら、後追う様に逝くのだから。

枯れない雫が頬を伝う。
それは、もうこの世には居ないであろう彼の想い人への胸の内。

届くはずなき、モノ。
だから、あたしの願いは・・・・・・・・・・・・―――――――――――――。
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