優しく撫でる嘘。
いつもより少し早く起きてお弁当を作りました。

張り切り過ぎて結構な量になってしまったのですが、ビニールシートにお弁当を広げると彼は大変よろんで食べてくれました。

「頑張って作ったね、どれもとても美味しいよ」

彼は全て食べてくれました。

潮風が優しく私と彼を包み込んで波の音が無音の景色に色を添えていました。

私は彼に隠し事なんてひとつもないのです。
勿論、彼も私に隠し事などないのです。

私たちは、そのような関係なのです。

波の打ち寄せる音を何度聴いたのでしょうか、辺りは暗くなっており、空には輝かしい星たちが私たちを照らすスポットライトになっていました。

砂浜に敷いていたビニールシートを畳み海岸を目指して歩き始めました。

昼とは違い夜は涼しく衣服が肌につく心配はありませんでした。

私は二人で座っていた砂浜を見つめながら名残惜しかったのですが隣に彼が居るので、そのような考えはすぐに消え去りました。

そして、彼の愛車のセダンという車種に乗り、海を後にしました。

私は車などには無頓着なのであまり詳しくは分からないのですが、結構な値段で購入したらしいのです。

そんな車での帰り道でのことでした。

私と彼に悪魔は牙を向けたのです。




< 3 / 10 >

この作品をシェア

pagetop