幕末〓冷血の鬼
斎藤さんは懐かしそうに昇ってきた月を眺めフッと笑った。


「俺が組の隊長に選ばれた時、俺は副長に抗議をしに行ったんだ。」


「一匹狼だったからですか?」


「ああ。隊士は俺にとっては足でまといでしかないと副長に言ったんだ。そしたら副長は少し寂しげな顔で言ったんだ。」


『お前は誰かを守る大切さを知った方が良い。大切な物を失ってからでは遅いんだ。誰かを守るために強くなれ。今のお前も強いがそれ以上は強くなねえぞ。』


「俺はその言葉を聞いて副長に勝負を挑んだ。」


「そしたらどうだったんですか?」


「負けた。」


「えっ?」


「一瞬だった。」


斎藤さんはそう言ってクスッと笑った。
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