【番外編】ご主人様は†ヴァンパイア†
 俺はため息を吐いてから、茜を水飲み場まで連れていくと、腰を屈めさせて怪我した個所を水で洗った。


「……っ」

「沁みるか?」

「……ちょっと」

 眉を寄せて、痛みに耐える茜。ばい菌が入って、これ以上綺麗な身体に傷をつけさせたくなかったので、念入りに洗った。


「これで大丈夫だろう。よく頑張ったな」


 ハンカチで膝を拭くと、もう血は止まったようだった。

「ありがとう」

 照れくさそうに微笑む茜。そんな笑顔がたまらなく好きだ。けれどそんなことを本人に言えるわけもなく。


「全くお前のせいで貴重な時間を無駄に過ごしたよ」


「……ごめん」


 いつも憎まれ口ばかり。幼馴染というものは、厄介なものである。
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