【番外編】ご主人様は†ヴァンパイア†
バドは立ちあがると、ゆっくりとした足取りでラシードの隣に立つと、驚く様子を隠すことなく、空中に浮いている鏡を食い入るように見つめた。



「ラシード様、これは?」



「様もいらないよ」



ラシードはバドを友人のように接した。


ヴラドの代わりに王になってから、右も左も分からないラシードを助けてくれたのはバドだった。


秘密結社の精鋭部隊も王宮に入ることが許されたが、彼らも影の暗躍者達。ラシードと同じで公の場には慣れていない。


頼みの綱にしていたピーターは、あの通り自由な男なので、困った時にいないというのが常だった。



困り果てていた時、思わぬ協力な味方が現れた。それがバドだったのである。



元は王族に仕える執事だったバド。



王宮のことは裏も表も知り尽くしている。ヴラドの身の回りの世話をするため王宮から遠ざかっていたが、本来の彼の仕事場所は王宮内なのである。
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