今宵 知らぬ円舞曲 歌われぬ旋律 まるで御伽噺。
ふたりは、力なく言うと、
弟は、ブーツを脱いで、
ソファーに飛び乗った。
まるで、着ている黒猫のように。
腰を高く上げて、頭をかがめる。
まるで、本物の猫のように。
「どうしたの? ユリー」
弟の名は、ユリーという。
「お兄ちゃん、お腹空いたよ。
お兄ちゃん、美味しそう」
「なにを言っているんだ?
ユリー? 大丈夫?」
そう言う、兄のラリーを無視して、
ユリーは、魔女の帽子を口で咥えて、
頭からとった。
そして、自分のかぶっていた、
猫耳がついている、
フードを落として、にこりと笑った。
「ユリー?」