王様と料理人
王様と料理人、そして守護獣
ラウル王に引っ張られて連れてこられたのは、いつもの王の部屋。

ちなみに謁見の間ではなく執務室なので、秘書官であるリュウさん以外は滅多に人が来ない。

現に今も2人きり。

「ラウル様。そろそろ離してください。」

いまだ掴まれたままの手を、くいと引っ張った。

「逃げないでね、トーコちゃん。」

笑いながら解放される。

…に、逃げたい…。

なんとなく間合いを取りながら、ラウル王に尋ねてみる。

「で、休みだと言われた私を連れてきた理由は何なんでしょうか。」

「綺麗なトーコちゃんの観賞。」

「部屋に戻りま…。」

「ウソウソ。トーコちゃんを建国祭の来賓にしようかと。」

「……来賓?」

聞き慣れない言葉。

あー、アレよね、お客様。

アバウトにとらえてみるが、疑問は消えない。

「なんで私が来賓なんですか?」

「来賓扱いだと、面白いモノと会えるよ。」

面白いモノ?

「あと、うちの料理長の自慢の料理の数々が味わえる。庭で立食パーティがあるんだ。」

それは行きたい、かも。

料理人は、大概の割合で食い道楽が多い。

なにせ食を追求するのだ、自身でも味わってナンボの世界だ。



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