王様と料理人
それに、実はまだチャドさんの料理をしっかりと味わったことがなかった。

「どう?トーコちゃん。」

「来賓扱いにしなくても、パーティーに参加出来るんじゃないですか?」

「ま、そうなんだけど。来賓の方が『噂』について色々聞かれなくて楽だと思うよ?」

「う。」

そういうものなんだろうか。

「では…お願いします。」

「じゃあ、お手をどーぞ。」

す、と差し出される腕。

え?

「…どうしろと?」

「来賓はエスコートしなくちゃ。」

笑顔のラウル王。

「目立ちそうで嫌なんですが。」

やんわりと拒否してみるが、来賓にはエスコート役がつくものだと説明され。

結局、ラウル王の腕をとり、歩き始めた。

「どこへ行くんですか?」

建国祭にさして興味がなかったし、それについて教えてくれるような知り合いもいなかったので、詳しく知らないのだ。

「まずは、神殿。」

神殿なんてものがあったのか…。

「面白いモノに会えるよ。トーコちゃんなら気に入られるかも。」

全く意味の分からないラウル王の言葉を聞きながら、歩くこと数分。

城の裏手にあたる場所に、美しい黒の建物が姿を現した。



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