─ Alice ?─
淡々と、だがどこか切なげに
ダイアさんは話しを続ける。
「しかし、ただやみくもに
自分の【モノ】にしても
つまらないと考えたのだ。
自分にとって、
アリスは一番の宝物だった……
ではアリスは?
アリスにとっての一番は?…
女王はアリスにとっての
一番になりたかった。
そのためには他の者も
自分同様にアリスを求め、
皆の中からアリスの一番つまり
アイシテイル者を選んで欲しかった……
しかしそのためには
黒兎の能力は邪魔だったのだ。
抑制など必要ない。
皆、アリスを欲し、求め、アイスル
そして自分を選べば…
この欲求は満たされる、
そう思ったのだ。」
唖然とした。
自分の欲求を満たす為だけに
黒兎さんを捕らえたの?
皆を狂わせてしまったの?
笑顔溢れる優しい国を
狂気で満ちた恐ろしい国へ
変えてしまったの?
「酷い…。」
思わず涙が込み上げてくる。
「そなたは優しいな。
我ら住人の為に
涙を流してくれる…。」
目を細くしながら
優しく笑い、ダイアさんは言う。
あれ、この笑顔…
どこかで見たことあるのに
どうしても思い出せない。
思い出したいのに
何かが邪魔をする。
「……記憶を思い出すには
多少の代償が必要だな。」
一瞬、
苦しそうな顔をし、私を見る。
「少々強引だが…仕方ない。」
スッ、と真っ白な手を
私の目の前へ差し出す。
「そなたが【 アリス 】に
なった日を見せてあげよう。」
ダイアさんの声が、意識が、遠のいていく。