─ Alice ?─


ギリギリと蔓は手足を締め付ける。


「痛っ…離して!
もう、やめ…てよ…!」




全てが真っ暗に見えた。



私のせいで二人は消えた。


私のせいでまた犠牲者が出る。


私のせいで 国が
世界が 皆 みんな



血 に 染 ま る ─




「…アリス?」




いつの間にか涙が溢れていた。
悲しみの涙なのか

苦しみの涙なのか


これが何の涙なのか
わからないけれど。



「もう…止めて。


これ以上、何も…」



何も 起 き な い で 。



誰も私を求めないで。

誰も私を追わないで。


誰も 誰一人 私を


アリスを



ありすを












愛 さ な い で 。



そうすれば皆、幸せだから。


そうすれば誰も、
血を流さなくてすむから。



誰も 傷つかない。


誰も 苦しまない。



私が



ありすが消えれば…



「アリス。
無駄な思考は捨てなさいと
言ったでしょう?


貴女が消えても
この世界の狂いは止まりませんよ?」


冷たく言い放たれた言葉は
私の胸に突き刺さる。


私が消えても止まらない

結局、私が何をしても
止まらないのよ、もう。

もう、どうでもいい。


チェシャ猫もシロウサギさんも
白兎も帽子屋さんも




黒兎さんも


みんな、みーんな






どうにでもなればいい。




「…もう、いい。」


瞼が重い。


「それがアリスの答え、ですね?」

頭がうまく働かない。


「…いいんです。何でも。」


「わかりました。




アリス、


貴女の全て、





いただきますよ。」



首筋に感じる生暖かい感触


内股に感じる蔓の棘


全身を帽子屋さんと蔓に縛り付けられ





もう逃げられない。
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