─ Alice ?─



枯れ果てた森を抜け、秋桜畑を抜け、赤く美しい海に辿り着いた。


此処で、チェシャ猫と私は再会した。




海を見渡すと、崩れ落ちた柱がいたる所にあった。



私は、この柱の道を通りやってきた。


なら、元来た道を通れば






国に戻れるはず。



崩れた柱を辿りながら、海の中を進み出した。


水は冷たくなかった。
ドロドロとしていて、生暖かい。




「───止めろアリス!!!!!」



後ろからは、必死になって追いかけてくるチェシャ猫。

慌てふためき、海を渡ろうとする。



けれど、私に追いつくことはなかった。





チェシャ猫はすぐ近くまで来たけれど





急に沈んでしまったから。





まるで海の底の何かに引きずりこまれたように




突然海の中へ消えてしまったの。







「…チェシャ、猫?」



コポコポと空気は水面へ上がり、姿は消えたのに、声だけははっきりと耳に残る。




「猫は濡れることが嫌いだよ。」



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