─ Alice ?─
「誰っ…───?」
耳に届いた声はチェシャ猫の声ではなかった。
聞き覚えのある 誰かの声。
「知ってる?アリス。猫は濡れることが嫌いだよ。」
おかしそうにクスクスと笑いながら、声の主は話しだす。
「猫は水が嫌いだよ。
水が嫌いだから、水辺も嫌いだよ。。
勿論、海も嫌いだよ。
だから此処も嫌いだよ。
猫が水に入ったところなんて見たことないよ。
けれど、今、猫は海の中に沈んだよ。
海が嫌いな猫が 海の中に消えたよ。」
何を言いたいのかさっぱりわからなかった。けれど、おかしそうに話す声の主に少なからず嫌悪感を抱いた。
「なんなのあなた?チェシャ猫を沈めたのはあなたでしょ?」
「アリスがそれを望んだから。」
私が、望んだ?
確かにチェシャ猫から逃げようとはしたけれど
「別に、沈めてくれだなんて…」
「でも望んだ。」