─ Alice ?─



金色に輝く懐中時計


時を動かす為に必要なもの


今、私の手の内にある。




「どうやれば…動くの?早く、早く動かさなくちゃ…」


黒兎さんが気づく前に。



ネジもなければリボルバーも無い


動かす手段がわからない。



「わからない…わからないよ…早くしなくちゃ…時間がっ…早く…」



焦りだけ募る



「15時にならなくちゃ…裁判は行えないのに。15時にならなくちゃ………15時、にならなくちゃ?」



15時になれば 裁判は行われる




「そっか。あは、はははっ…15時になれば問題ないんだ。」


針に、そっと触れる




ゆっくり ゆっくりと秒針を回していく。



カチ   カチ    カチ   カチ カチ カチ カチカチ



針が進むにつれ、心臓も鼓動が早くなっていく


あと少し あと少しで










       ……カチ



あと5秒

  カチ

あと4秒


     カチ


あと3秒




      カチ




戻れる アリスに戻れるんだ




頭の中はそればかりで


時が進んでいるのは自分だけのように錯覚していて




        ポタ


時計に夢中になっていた。






  ポタ   ポタ ポタ




針を進めようと指を伸ばすと、【 ポタ 】と水滴が時計に落ちてきた。


雨、ではない。



そんなのすぐにわかった。




「………見つけた。」






滴は 透明ではなく
【 赤 】だったから。
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