─ Alice ?─



どこを見渡しても
薔薇、薔薇、薔薇。


だが薔薇は色ムラが
激しく、
真っ赤なものや
真っ白なもの、
淡い桃色や
赤黒いものまで
様々だった。




「綺麗、とはあまり
いえないわね…。」


帽子屋屋敷の薔薇は
全て《 紅 》だった。



それはとても
鮮やかで、

心奪われるよう。



しかしここの薔薇には
魅力を感じない。


むしろ何か
不気味ささえ
感じてしまう。




「……
厄介なとこに来たな。」


頭をポリポリ掻きながら
溜め息をつくチェシャ猫。


「厄介って…何が??」



「アリス。ここはまずい。
とにかく
早く抜けるぞ。
説明は抜けてからだ。」





「ちょっ………





待ちなさい馬鹿猫!!」




説明をせずに
急ぎ足でさっさと
いってしまうチェシャ猫に
苛立ち、思わず
大声で叫ぶ。



すると
不思議なことに
私の声は
エコーがかかったかの
ように響き渡っていた。



「な、なにこれ??
チェシャ猫おぉお!!!」



ネコォ-ネコォォォ-




「煩い。」



カチン




「いいじゃない!!
珍しいからッ…ひゃあ!?」



ズテーン



何かに引っかかった…?


いや、でも足元には
なんにもないはず…



チラリと足元を見ると、
何かが私に
しがみついているのが
見えた。
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