獣~けだもの~
 その変貌ぶりに、目を丸くしている弁慶に。

 遮那王は、笑った。

「さて、これから忙しくなるぞ。
 やる気になっても、味方はわずかだ。
 弁慶には、目一杯働いてもらうからな」

「それは、もとより承知」

 そう、至極真面目に言った弁慶に、遮那王の笑いが、悪戯をする直前の子供のようになった。

「だから、先々への展望を見据える為にも。
 これから、夜具の中で、作戦会議をしょう。
 ああ、そこのでかいのは、来なくて良いぞ。
 定員は、裸の男女二人までだから………てっ!」

 なんとも、あまり懲りて居ないような遮那王の言いぐさに。

 弁慶は、無言のまま。

 扇で遮那王の頭を叩いた。

「なんとする。
 そもそも、一晩付き合う約束はあったはずだ」

「そう言う寝言は、寝て言え。
 そもそも、わたしから刀を奪えるほどの腕は無いくせに」

「何、腕を上げたら、我と寝てくれるのか」

 大真面目な遮那王の言い草に。

 弁慶は、からからと笑って言った。

「ま、本当にわたしを倒すことができたら、な。
 考えてやってもいい。
 しかし、今のお前の腕前では、きっと。
 十年経っても、無駄なような気がするぞ」






 




< 26 / 40 >

この作品をシェア

pagetop