獣~けだもの~
遮那王のために。
弥太郎のために。
そして、自分のために。
命の消える、その時まで、わたしは、走り続けてやる……!
弁慶は、かかった血をぐい、と拭いて、叫んだ。
「さあ、次に死にたい奴は、誰だ……!」
血に染まった一匹の獣の咆哮に。
館を取り囲んだ、武者たちは。
まるで、見えない壁に阻まれたかのように。
その、迫力に押されて、皆一歩下がった。
……
昔語りをいたしましょう。
祇園精舎の鐘音響く
昔々の、夢がたり。
命を賭けたその想いも、ただ
儚く散って、春の夜の夢のごとし。
それでも確かに。
歴史の隅に。
時間の陰に。
確かに獣は、生きていた。
……
「いざ、参る」
血に濡れた、長刀という爪を牙を閃かせ。
まるで、飛ぶように戦場を駆けぬける獣に。
もう、一点の迷いも、後悔もなかった。
<了>
H22.7.7.am3:24
読者数/6
PV数/758
弥太郎のために。
そして、自分のために。
命の消える、その時まで、わたしは、走り続けてやる……!
弁慶は、かかった血をぐい、と拭いて、叫んだ。
「さあ、次に死にたい奴は、誰だ……!」
血に染まった一匹の獣の咆哮に。
館を取り囲んだ、武者たちは。
まるで、見えない壁に阻まれたかのように。
その、迫力に押されて、皆一歩下がった。
……
昔語りをいたしましょう。
祇園精舎の鐘音響く
昔々の、夢がたり。
命を賭けたその想いも、ただ
儚く散って、春の夜の夢のごとし。
それでも確かに。
歴史の隅に。
時間の陰に。
確かに獣は、生きていた。
……
「いざ、参る」
血に濡れた、長刀という爪を牙を閃かせ。
まるで、飛ぶように戦場を駆けぬける獣に。
もう、一点の迷いも、後悔もなかった。
<了>
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