【詩】記憶の持続性
千夜の夢
ある時〈私〉は浜辺を歩いていた。
浜辺…だったのだろう。
本来浜に打ち寄せる海の波は、時が止まったかのように静止していたけれど、確かにそこは海で、〈私〉は浜辺を歩いていたのだから。
後ろを振り返ると足跡が永遠のように続いていた。
 
どれくらい歩いたのだろう。
〈私〉は砂漠を歩いていた。
辺りには何もない。
砂と、砂の丘があるだけ。 
 
自分がどこから来てどこへ向かえばいいのかも分からなくなってしまった。
誰にともなく取り残された〈私〉はしばらくその場から動けなかった。
 
けれどさほど考えることなく、再び歩き出した。
 
そのうちどこからか笑い声が聞こえた。
 
どこから聞こえるのだろう。
辺りには誰もいないはず。
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