奇蹟のはじまり
『思い出したんだ?』

『うっすらと、だけど』

何の話をしているのか。

聞く気はなかったけれど

知らず知らずに呼吸すら

少なくして二人の話に耳

を傾けていました。

『どこまで?』

『ほぼ全部だと思う。長

い旅をしてきたところま

で。ただ、どうしてもう

一度人間に生まれ変わっ

たのかは思い出せない』

『それだけ思い出せてれ

ば充分だよ』

『潤は?潤はどうして人

間の姿をしてるの?』

思わず声を出しそうにな

り、一つ深呼吸をしまし

た。

確かに今、翔の口から聞

きたかった名前が出てき

たと思いました。
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