奇蹟のはじまり
『特に変わった様子もな

いですね』

「うん。だけど」

『だけど?』

「いなくなった気がする



『いなくなった?』

かずが不思議そうな顔で

先を促しました。

僕も何て言ったらいいの

かわからなくって慎重に

言葉を選んでいました。

「なんていうのかな。こ

の木が抜け殻になったみ

たいに感じる。潤くんの

気配を感じられない」

かずがちょっと険しい表

情になって、慌てて付け

加えました。

「僕がそう感じるだけだ

から。気のせいだと思う

し」

だけど、かずは小さく首

を横に振りました。
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