偽りの仲、過去への決別
松山と、カズの仲は、平行線のままであった。 松山は、悩んでいた。どのタイミングで、カズと仲直りをしていいかわからずにいた。 カズも同様だった。 松山は、カズと違って、生まれた時から、この場所で育った。 松山は、カズと違って、生まれた時から、この場所で育った。 松山は、カズと違って、家族の愛情を存分にもらい、育った。家族がいつも近くにいることが、当たり前であった。 寂しい時がなく、逆に、家族の存在が、うざったい時期がいつもあった。 松山の母親は、専業主婦で、子供4人を育てていた。 優しい母親で、元々は、教師で父親と一緒の学校で働いていた。 父親は、松山の学校の教師であった。 松山は、父親に対して、どこかよそよそしかった。尊敬はしていた。 でもなぜだかわからないが、いつも2人の間には、緊張状態であった。 松山先生は、松山を一人の息子でなく、一人の生徒と見ていた。他の生徒と差別することなく接していたかった。 松山には、そんな先生の気持ちがわからなかった。父親でいてほしかった。 そんな2人を松山の母親は、黙って観ているしかなかった。 松山の親子関係は、カズと違って、身近な存在の父親が、自分のことより、他の生徒のことばっかりで、自分を無視しているみたいで嫌だった。 しかし、カズが、学校に転校してきて、松山は、何かが変わった。 始めのうちは、カズの存在自体に興味すらなかった。 しかし、松山の感情を刺激する出来事が起こった。 カズがまともに喋れず、国語の本を読めずにいた。このことが、きっかけでカズは、クラスの笑いものになってしまった。 松山はこのことに衝撃を受けたわけではなかった。 毎日、担任教師はカズに本を読ませた。その度にクラス中がカズを馬鹿にし、カズが、担任教師に指名されることを楽しみにしている生徒達がいた。 しかしながらカズは平然としていた。席立つ時、いつも周りを見つめていた。どこかしら冷めた表情をしていた。 松山に衝撃が走った。なぜこんなに笑われて平気なのかわからなかった。 いや、平気なわけがなかった。いつも一人でいるカズが、松山は気になってしょうがなかった。
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