偽りの仲、過去への決別
この2人によって洋二の人間関係のバランスの調子が狂ってしまった。だからこそもう一回特にカズと話しをしたかった。 カズは、この町の出身ではない。しがらみもない。だから洋二に何も遠慮することがない。だから洋二に対して、本音で話しをしてくれるかもしれないと心のどこかで期待していた。 カズは相変わらず、結衣と仲良く話しをしていた。結衣もカズのことが好きだと最近痛烈に感じていた。 カズの言語障害も治っていた。リハビリのおかげもあるが、結衣や松山のやさしさのおかげでもあった。 精神的安らぎを得て、リハビリにも集中でき、何年かぶりにやっと落ち着いた生活ができていた。 この町にも慣れ、少しは、この町が好きになっていた。 カズは、松山や結衣を通して、この町が好きになっていた。 人は、生まれ育った場所が故郷になる。 しかしカズみたいに、いつも移動をしている人間は、疑似体験した故郷しかない。 どことなく1つの故郷を想い出すことはなく、いろんな場所の故郷をつなぎ合わせて想いだすしかなかった。 その想い出は、慣れない土地の苦労や、新たに作らなければ人間関係が主になっていた。 たくさんの想い出ができるかもしれないが、何か不安定で朧気な要素がつきまとっていた。 大人への性格形成に置いて、少なからずは、影響がでるだろう。 余程の注意をしないと、身も心も、孤独に慣れ社会に置いて、人間関係を築けなくなるかもしれない。 しかしカズは、まだ運が良かった。確かに両親の問題はあったが、まだ人間関係においては、苦境に落ちいることはそんなになかった。 カズ自身の努力もあった。何事においても、現実的に物事を把握していた。現実を知ることが逆に社会からの逃避を防げることをカズは経験していた。 自分の想像の殻に閉じこもっても、結局、いつかは出なくてはならず、カズにとってただの時間のロスにしかならなかった。 カズは早く新しい場所に馴染まなければならなかったからだ。