偽りの仲、過去への決別
カズの友達の名前は、松山と言った。松山だけは、クラスメイトのなかでカズのことを一回も笑わなかった。 松山の父親は、カズ達の学校の先生でもあった。 カズの社宅と松山の家は近所であった。カズはいつも一人で学校から帰っていた。 そんなカズを松山が声をかけたのが、きっかけで仲良くなった。 カズは最初のうちは、警戒心を持っていた。しかし、松山がカズのことを笑ったことがないことを、気付いてからは、少しずつ心を開いていった。 学校の休み時間も、松山と一緒にいた。 それからは、松山の影響なのか、クラスメイトが、カズに対して、笑うことがなくなってきた。 やっとカズの学校での、環境が落ち着いてきた。 松山の家はカズにとって、心が落ち着く空間であった。 松山には、二人の弟と、末っ子で二歳になる妹がいた。 松山の顔は、カバに似ていた。兄弟達も松山にそっくりだった。 松山の家は、お世辞にも、外見が立派な家ではなかった。 しかしなぜだか家の中は温かい感じがした。二回建ての家はいつも散らかっていたが、松山の母親は、気にもかけていなかった。