偽りの仲、過去への決別
カズのことも、松山の母親は可愛がってくれた。毎日、夜までいるカズを、一回も嫌な顔をせず、なにも言うことはなかった。 松山の父親、松山先生もなにも言わなかった。 カズは、松山の家が自分の家のような錯覚に陥っていた。 いやこのまま、時が止まり、ずうとこの家にいたかった。 兄弟達は、カズになついていた。警戒心を持って生きていたカズは、最初のうちは、戸惑いがあった。しかし松山と同じカバの顔を見ていると、自然と打ち解けていった。松山は、やさしいかった。勉強もできた。 カズにないものを持っていた。環境の違いなのだろうか、それとも、生まれた時からの個人の資質の違いなのだろうか。 でもそんなことはどうでもよかった。カズには、今現在が楽しいたから。 カズは言った。 「松山さあ~、いつも遊びに来て迷惑かなー。」 「そんなことないよ。だって友達だろう。」 松山は笑いながら言った。 「俺の家に遊びに来たいと思わないかい。」 カズは悲しかった。本当は松山に家に来てほしいと思っていたが。しかしあんな居づらい家なんて。 「別にいいよ。うちの家で遊べばいいよ。」
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