偽りの仲、過去への決別
「先生も詳しいことを知らされてないんだ。だから連絡しようもないし。」「先生は一回ぐらいお見舞いに行くことはあったんでしょう。」 担任教師は何も答えなかった。いや答えられることができなかった。行っていないことは、同僚の先生達は皆知っているからだ。 松山は頭を下げると何も言わず職員室を出た。 洋二は松山がなぜ担任教師に呼ばれたのか知っていた。いやクラス中が知っていた。松山は前日何を考えてかわからないがカズの見舞いに行くことを宣言した。ほとんどのクラスメイトの反応は冷ややかなものだった。 第一、会えるわけないとみんな思っていた。松山の宣言なんかただのはったりにしか聞こえなかった。 しかし松山は病院に勝手に忍びこみカズに会ってきたことが判明した。 洋二は本当に会いに行くなんて思いもよらなかった。
クラス中が苦笑いに包まれていた。 みんなが松山の行動力に驚きを隠せなかったからだ。 洋二は松山に声をかけた。しかし松山は洋二を見ただけで無視をした。 洋二は松山が無視する理由がわかっていた。大体が仲の良くない2人であった。
近くにいた結衣がたまりかねて2人の間に入ってきた。 「ねえー松山君。カズ君のところ行ったんでしょう。様子はどうだった。」 結衣は尋ねた。しかし松山は結衣の言葉に答えようとはしなかった。
結衣は松山の態度にイライラを募らせた。 洋二はわかっていた。松山が怒っている理由が。 前日カズの見舞いに行くと宣言したのに誰一人賛同者がいなかったからだ。 特に結衣と洋二に対しては怒っていた。
「まさか本当に会いに行くとは思っていなかったんだ。」 洋二は言った。 「私も。」 結衣も言った。 それでも松山は何も言わず黙っていた。 洋二は言った。 「結衣ちゃん、今日カズの病院に行こうよ。俺だったらあそこの病院知り合いいるし。」
洋二は松山の気を引くために適当なことを言った。 松山は急に話し始めた。「行ったところでカズには会えないよ。会えたとしても全然話せないし。」 松山の表情が曇っていた。 「やっぱりそうなんだ。」 2人はため息をついた。
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