草食系俺様男子
ギュッ
「いでっ!」
その手を、誰かの足に踏まれた。
朝から寝坊はするし、誰かにぶつかるし、受験票は落っこちるし、手は踏まれるし。今日は散々な一日だ。
グイッ
「えっ、」
「…わり」
泣きそうになりながら受験票を手に取ったその時。
誰かに腕を捕まれて、そのまま引っ張られた。
「っ、」
その人は、すごい美少年だった。ほんのり茶色がかった瞳に髪の毛。顔立ちもすごく綺麗で背も高い。
思わずときめいてしまう。
「ごっ、ごめんなさい!」
ブチッ
「「あ…」」
恥ずかしくなって手を振り払おうとしたら、その手がその人の学ランのボタンに当たってしまい、ボタンが取れてしまった。
しかも…第2ボタン。
「すすっ、すいません!」
必死で謝ると、その人はボタンを拾いながら、
「はは、いいよいいよ。どうせもう着ることないしね。」
と言ってくれた。
そして、
「はい」
「え?」
私の手を取り、そのボタンを乗せる。
「あげる。手、ふんじゃったお詫びだから」
「いやっ、いらな…」
さすがに、会ったばっかで好きでもない人間から第2ボタン貰ったって何の意味もない。
…確かにかっこいいけどさ…
「いいから。じゃね」
でもなんでだろう。
また会いたいと、心のどこかで思っている自分がいた。
合格、したのかな。
校門へと歩いていく背中を眺めながら、そう思った。
春、
「…あ、あった。」
「しの!私もあったよ!」
「やったね!」
「うん!うれじ〜(泣)」
「また泣く〜!」
卒業、そして出会いです!