雪情
【カモシカー3】


順番は田崎、白井、
大久保、小川の順番で
歩いている。



危険なのは
先頭と後方だが、

もちろん田崎が先頭で、
残り三人の中で
一番腕の立つ小川が
後方役である。



白井はのん気で
大久保は
少し緊張気味であるので

田崎のこの順序の選択は
間違っていなかったと
言えよう。



「あ」



突然白井は声を上げた。



「どうした!」


田崎が後ろを振り向くと
白井は森に
指を指している。


急いで
その先を見てみても
何も見えない。


「何が見えた!?
雪男か!?」


と田崎は
白井に聞いた。


「見えないのか?
ほらあそこ……」


「見えないから
聞いてるんだろ!

何がいる?」


そう言うと
白井はアッサリ答えた。


「カモシカ」


「は?」


と森に光る目が見えた。


見ればカモシカである。


田崎はホッとする。


「なんだカモシカか……

白井よ、
イチイチそんなことで
大騒ぎするな」


「いや俺は『あ』としか
言ってないぞ。

勝手にあんたが
大騒ぎしたんだろ」


「それは……」


白井の言う通りかも
しれないので、
反論できない。


それでも、
細心の注意を
払わなければならない。


田崎は言った。


「それでも
何かあったら遅いん
だからな。

今我々は
命がけで雪男の捜索を
しているのだぞ」



「珍しいんだから
いいだろ別に」



「確かに珍しいですね」



と大久保が言った。

続けて

「こんな時に
この山で見るなんて、
あれは珍しいですね。

こんな状況じゃなければ
すぐに狩りをして
いましたよ」



「ほらな、
珍しいんだから
いいんだよ」


理由になっていないが
白井はそう言った。


田崎も少し
呆れ顔である。


(本当にこのメンバーで
大丈夫だろうか…)


と不安を募らせながらも
どんどん進んで行った
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