雪情
【存在せぬものー3】


やはり
警察の大掛かりな
山狩りでも

見つからなかった程
なので、

たった四人で
見つけ出すのは
不可能であったのかも
しれない。






「やはり、
ここは早めに
川上さんを説得させ、
下山するべきですな」






「朝を待つと言う
方法もありますよ。

少しでも明るい方が、
私たちに分があります」






「むう……

…この吹雪さえ
なくなれば………」






例えまた吹雪が止んでも

下山するまでに
雪が降らないとは
限らない。






山の天気と言うのは
変わりやすく、

特にこの山は
地形のせいか、

さらに天候が
変化しやすかった。





「おい、お湯沸いたぞ」






台所から白井の声がした






「おお、
悪いが
茶碗か何かに入れて
持ってきてくれ」






言われた通り
白井は茶碗にお湯を入れ

田崎に差し出した。





「ところでよ、
死体はあのままに
置いといていいのか?」






「なんだ急に?」






「いや、
何か放置していたら
可哀想に思って……

かといって
ここに置くのも
ちょっと嫌だけどな」






「死体は
事件のあったまま、
証拠として
動かさないままに
しとかなければならん。

あのままにしておくのは
可哀想だが、

仕方がないんだよ……」






「………」






田崎もできることなら
ちゃんとした場所に
置いてやりたいが、

これは明らかに
殺人事件である。






酷だが
死体はそのままにして
おくしか、

田崎にはできなかった。






事件があったら
死体を動かさないことは
当たり前のことだが、

そんな警察的考えは
田崎や白井は
好かなかった
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