雪情
【雪情ー2】


体もとても巨体であり、

日本の熊にしても
これは大きすぎる。




相手が熊なら分が悪い、

命乞いをしても
熊に言葉も感情も
通じないからである。




このまま俺は
殺されるのだろうか…?




白井はそう思っていると

雪男は巨体を揺るがせて
のそのそと近付いてきた




「白井よ、
決してヤツに
手を出すでないぞ。

危害を加えてはイカン」




田崎はそう言うが、

落ちている拳銃で
追っ払いたいものだ。




ギシ……ギシ……ギシ…




雪男は二人のもとに、
一歩一歩
近付いてきている。




「お、おい……

け、け、け刑事さ、さん
よ…」




震えて
白井はほとんど
声が出ない。




「だ、大丈夫だ。
きっとな…。

もしワシの考えが
正しければ……」



と、ついに雪男は
二人の目の前に来た!



その距離は
ほんの1mもなかった。



雪男は
顔をググっと突き出し、
二人を見ている。



何故か田崎は
冷静にそれを見ているが

白井の方は
気が気じゃなかった。



鼻息が当たる度に
恐怖を感じ、

距離も自分の命も
近いと思った。




そして………!!!!



不意に雪男は、
クルッと向きを変えて
歩き出した。



そして、
そのまま小屋を出て
行ってしまった。



「な……な…?」



自分達だけ
殺されなかったのを
白井は疑問を感じながら

離れていく
雪男の背中を見ていた。



命の覚悟をしていたのに
助かったのだ。



大久保だけが
襲われたのに
どうして…?



「ど、どう言う事だ?」



と、その時

雪男に
別の小さな黒い物体が
近付いているのを
白井は見た。



それを見た田崎は
呟いた。



「ふ…
やはりそうかね」



それは、
小さな
小さな
小熊であった
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