雪情
【雪山ー3】


世の中には
偶然というものは
あるのだろうか?






いや、
ここにはあったのだ。







田崎は担当していた
殺人事件の犯人を
追う為に、
ここ何日か必死になって
犯人を探していた。






その犯人の時効が
今月の末まで、

今現在で言うと明日が
時効なのである。








田崎は
目撃証言のある街中を
隅々まで探したが、
結局見つかることは
なかった・・・







期日も迫って
諦めかけた田崎自身も、
こんな逃げ道もない
山の村の中、
「まさかな……」と思い
探し歩いていたら、
なんと偶然道で
追っていた犯人と
バッタリ遭遇。






その場で即逮捕したのが
今、田崎の隣にいる
一言も喋らないこの
男である。







隣の男は
白井康司という名であり

先程から黙って
窓越しに駅の外の雪を
眺めていた。







田崎と駅員の
二人の会話に、
まるで興味がないようだ







一見おとなしそうな
この男は、
実際本当におとなしい
のである。







逮捕の時も
いきなり刑事に捕まり
ビックリはしていたが、
決して暴れもせず
素直に応じてくれた。







しかし、
捕まるときに
暴れなかったのは
今の状態になることを
分かっていたのかもしれない。







今の状態とは
雪でこの村から出れず、
明日の時効までに
署に行くのは
不可能という状態である







白井を
道で捕まえたその時から
すでに雪は降って
いたので、
電車が雪で不通になる
ことは
白井には分かっていたと
予想ができる。







そのせいかなのか、
明日までにこの村を
出られないと
思っているから
おとなしいのだろうか?







つまり、
この男は
猫をかぶっているとも
思える
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