雪情
【雪山ー4】


白井は
この村に隠れて過ごして
いたわけではなく、
堂々と村の住人として
過ごしていたのである。








ここの駅に来る途中、
すれ違う村人が
皆白井に挨拶を
していた。







普通手錠をしていたら
村人は何事かと
聞くであろうが、
白井の両手には手錠は
掛かっているものの、
腕を組んでいて
手錠を見せないように
していたのだった。







少し不自然に見えるが、
この寒い雪の中なら
それも自然に見える。







外見からではまず
分かりはしない。






よほど
村人に見られたくない
のか……







そんな検索より、
今はここから街まで
行く手段を
考えなくてはならない。







「どうにかして街まで
行く方法はありません
かね?」








と田崎はすがる思いで
駅員に聞いた。







ワラをも掴む感じである







「あとは
歩いて行くしかねえだよ

山越えだな。

でもワリーことは
言わねえ、
こんな大雪じゃあ
山越えは厳しいから
どこかに頼んで泊まって
いけ」








田崎もそうしたいのは
やまやまであるが、
犯人と泊まったら
いつ寝首をかかれるか、
または隙をみて
逃げられるか分からない








小柄な刑事にしては、
田崎は瞬発力があり
細かいことも素早く
動けるが、
歳が
50近くにもなるので
体力がない。







ましてや白井はまだ
20代の若者。







格闘での
自信があるものの、
逃げられたら終わりだ。







そうなったら
水の泡である。








「仕方ない……
山越えをしよう……」







そう呟き
駅員に道を聞いた
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