雪情
【雪山ー5】


グズグズしては
いられない。







駅の外に出ると
寒さが
半端ではなかったが、
引き返すわけにも
いかない。







せめて
体の中だけ温めようと、
自動販売機の前に立った







「白井よ、
お前も何か飲むか?」







「………」







相変わらず
黙ったままである。







「お前ここではいいが
取調室でも
黙ったままじゃダメだぞ」








そんな軽い冗談も
白井は反応もせず
黙って空を見つめている








「やれやれ………」






田崎はコーヒーを買い、
味わいもせずに
一気に飲み干した。







当然舌は火傷したが、
この大雪の中では
このくらいが調度いい。







そのおかげで
一気に体の中が
温まってくる。





この寒い中で
唯一の幸せの瞬間だ。






体が温かい内に
さっさと山越えを
しよう………




田崎は
そう自分に言い聞かせて
歩き出した。







白井も
黙ってついて来ている。







周りを見渡せば
畑ばかりで、
家が2、3件と
遠くの方に数えられる
くらいしかない。







この村は
山に四方を囲まれた
小さな村なので、
民家が少ないのも
当然である。







そのせいか
交通に不便があり、このように
山越えをしなくては
ならないのだ。







ここから山までは
ほぼ一直線で行くことが
でき、

山道も迷うことはないが

その山道は
舗装された道路ではなく
ほぼ獣道だということ
らしい。







そう思うと
まだ山の麓にも
着いてないので、
少し憂鬱な気分である。






さすがに手袋なしは
キツイものだ、
と手をこすりあわせ
息で暖める
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