比丘尼の残夢【完】
きをつけ、の姿勢で90度腰を折った私に、奥様は真剣な顔をして近づいてくると手をとった。


「ナナミさん... こんなことを押し付けてごめんなさい。直嗣さんのことをお願いね」

「へぇ... ?」

なんのことやら。

これからご主人様になると言うその人が、なんだか大変な人物であるのだろうか... 。


不安は増したが、まぁ仕方ない。

私がここで働くことで、田舎の親や兄弟たちは明日のご飯を心配せずに済むのだ。



「ごめんくだせぇまし... ! 今日から女中奉公に参りました、ナナミでごぜぇます!」

小さな平屋で、この声が聞こえないはずはないのだが。

しばらく待っても招き入れてくれる気配もなく、私は勝手に入ることにした。

でも、その玄関で悲鳴を上げることになった。

「ひっ、ひぃっ... 」

倒れていたのは、私の一番上の兄ちゃんくらいの男の人。
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